柱状杭 鋼管杭 どっち? パート2
敷地周囲に擁壁がある場合
敷地周囲に擁壁がある場合、杭工事の選択には特別な配慮が必要です。擁壁は地盤や周囲の安定性に大きく関係しており、不適切な施工が擁壁の変形や崩壊を引き起こす可能性があります。このような状況では、以下のポイントを考慮して杭の種類を選ぶべきです。
擁壁がある場合の選択基準
1. 擁壁の種類と状態を確認
- 古い擁壁や劣化が進んでいる擁壁の場合、杭施工時の振動や荷重が擁壁に悪影響を与える可能性があります。
- 擁壁が鉄筋コンクリート製で安定している場合は多少の振動を伴う工法も検討可能ですが、擁壁が乾式ブロックや石積みの場合は振動を最小限に抑える工法が必要です。
2. 杭施工時の振動・騒音の影響
擁壁に近接する場所で杭工事を行う場合、施工時の振動や騒音が擁壁を損傷するリスクがあります。そのため、振動が少ない工法を優先的に選択します。
●柱状杭:地盤改良材を混合するだけなので振動が少なく、擁壁周辺でも比較的安全に施工できます。
●鋼管杭:打ち込み工法(ハンマーで叩き込む方法)は大きな振動を伴うため避けるべきですが、回転圧入工法であれば振動を最小限に抑えられます。
3. 擁壁が支えている地盤の状態
擁壁がある敷地では、擁壁の背面側の地盤(建物を建てる側)が軟弱である場合が多く、杭が擁壁を通じてその荷重を分散する可能性があります。この場合は鋼管杭が適している場合が多いです。
- 柱状杭は支持層が浅い場合に有効ですが、擁壁周辺で軟弱地盤が深い場合、地耐力を十分に確保できない恐れがあります。
4. 擁壁の高さと建物の位置関係
- 擁壁が高い(例:2m以上)の場合:擁壁の背後の土圧が大きいため、杭に高い支持力が必要となり、鋼管杭を選ぶ方が安全。
- 擁壁から建物までの距離が近い場合:振動を抑える柱状杭が優先されることが多い。
5. 地盤調査の結果
擁壁周辺は通常の地盤よりも条件が複雑な場合があるため、ボーリング調査やスウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)を実施して、支持層の深さや地盤の強度を詳細に確認する必要があります。
- 支持層が深い場合:鋼管杭
- 支持層が浅い場合:柱状杭
選択肢別のメリットとリスク
柱状杭
- メリット:
- 振動や騒音が少ない。
- 擁壁に与える影響が小さい。
- コストが抑えられる。
- リスク:
- 支持層が深い場合は適用できない。
- 軟弱地盤が厚い場合、荷重を支えきれない可能性。
鋼管杭
- メリット:
- 深い支持層まで到達可能で、地盤の安定性を確保しやすい。
- 重い建物や高い擁壁にも対応可能。
- リスク:
- 打ち込み工法は擁壁に振動や衝撃を与えるリスクが高い。
- 回転圧入工法を採用しても、施工コストが高くなる可能性。
おすすめの選択と対策
- 擁壁が新しく、支持層が浅い場合:
柱状杭を採用。ただし、地盤改良を十分に行う。 - 擁壁が古く、支持層が深い場合:
鋼管杭を採用し、振動を抑える回転圧入工法を選ぶ。 - 追加対策:
- 擁壁の健全性を事前に確認する。
- 擁壁周辺の地盤を補強するため、杭施工前に簡易的な地盤改良を行う。
- 施工中の振動・騒音管理を徹底する。
まとめ
敷地周囲に擁壁がある場合、地盤調査の結果と擁壁の状況に応じて適切な杭を選ぶ必要があります。振動や騒音の影響を抑えながらも十分な支持力を確保するため、場合によっては鋼管杭の回転圧入工法が有利です。コストと安全性のバランスを考え、決定することをお勧めします。